Kはどこへ消えた?
自己啓発書みたいなタイトルにしてみましたが、英語を学ぶとき、スペルと発音がまったく一致しない単語に出会って戸惑ったことはありませんか?(この導入も自己啓発っぽい)
たとえば、「knife(ナイフ)」。
最初のkは発音しない、と教えられてきましたが、だったらこのkはどこから湧いてきたのか?
たとえば、「indict(起訴する)」。
実際に発音してみると「インダイト」。
…What the ファッ!?
Why British peopleなのですが、ほかにも「island(アイランド)」や「hour(アワー)」など、文字をそのまま読めば全く違う読み方になりそうな単語ですが、なぜ英語にはこんなにスペルと発音のズレがあるのか、わからん!わからねば!
…ということで、今回はその理由について調べたことを書いていきます。
英語 = ゲルマン語系 + ラテン語系
結論から先に言うと、英語はいろいろな言語が入り混じってできた「ミックス言語」だからです。
もともとイングランド(イギリス)にはゲルマン語系のアングロサクソン人が住んでいて、彼らの古英語が話されていました。
しかし、1066年にフランス北部のノルマンディーからノルマン人がやってきて、イングランドを征服します。
北欧ヴァイキングの出身だったノルマン人(『ヴィンランド・サガ』の少し後の年代の人たち)が海を渡ってイングランドへ攻め入った「ノルマン征服」によって、イングランドはフランス語を話すノルマン人の支配下に入りました。
そのノルマン人が使っていたのが、フランス語(ラテン語系)に近い言葉です。
これによってイングランドにフランス語由来の単語が大量に入ってきて、英語はゲルマン語系とラテン語系が入り混じった形になりました。
その結果、たとえば「ask(尋ねる:ゲルマン語系)」と「inquire(質問する:ラテン語系)」のように、ゲルマン語とラテン語の意味が重なる単語がたくさんできました。
ゲルマン語系 vs ラテン語系
こうした影響は、単語の発音にも表れています。
ゲルマン語系→ラテン語系で、それぞれの発音がどう変化したか、いくつかの単語の例を挙げます。
🔪 knife(ナイフ)
ゲルマン語系の発音:「クニーフ」
ラテン語系(フランス語を介した変化後): 「ナイフ」古い発音では、kが発音されていたのですが、フランス語に影響され、現在の「ナイフ」という発音になりました。
🏝️ island(アイランド)
ゲルマン語系の発音:「イスランド」または「イースランド」
ラテン語系(フランス語の影響): 「アイランド」元々は「アイランド」という発音ではなかったのですが、ラテン語系の影響で発音が変化しました。
⏰ hour(アワー)
ゲルマン語系の発音:「フール」または「ホール」
ラテン語系(フランス語の影響): 「アワー」もともとの発音からhが無音になり、フランス語の影響で「アワー」となりました。
こうして英語には、ゲルマン語系とラテン語系の異なる発音規則が入り混じり、そこからスペルと発音のズレが生まれることになります。
スペルと発音のズレ
さらにその背景には、歴史的な言語の混合だけでなく、時代とともに進化してきた「発音の変化」と「スペリングの固定化」も関係しています。
特に、15世紀に印刷術がヨーロッパに普及したことで、英語のスペルは固定化されていきました。
印刷物によって単語の表記が広く流通し、綴りが確立していく一方で、発音は時代と共に変化していきました。
このため、発音が変わったにもかかわらず、スペルは昔のままの形が多く残ることになりました。
たとえば、「knight(騎士)」の最初の「k」は、古英語では発音されていたものの、後に発音が消失しました。
しかし、スペルは固定されたため、「k」はそのまま残ることになったのです。
これはBUMP OF CHICKENの『K』のモチーフにもなっていますね。
このようにして、「無音のk」や「無音のh」など、現代の発音とは一致しないスペルが多く見られるようになりました。
あと、15世紀から18世紀にかけて、英語の長母音(long vowels)が一斉に変化する「大母音推移(Great Vowel Shift)」と呼ばれる現象も関係していくるのですが、長いので割愛します(「大海嘯」みたいでカッコイイ)。
…と、長々と書いてきましたが、そもそもイギリスと同じ島国の日本でさえ、むかし侵略による統治がなかったにせよ、1000年前の平安時代の人の言葉を現代の私たちが理解するのはかなりムズいしキビいでしょう。
That’s enough.(もうええわ)
ありがとうございました(退場)